故郷は遠くなって愛しく 『夏目友人帳』に故郷を想う

 

義母の一周忌で

 11月下旬、熊本県球磨郡に行ってきました。
久しぶりで、令和2年の球磨川豪雨災害以降は、初めての帰郷となります。

義母は昨年、義父は2016年に他界しました。
今年の春に、2人が住んでいた家も片づけてしまい、帰る場所がなく、今それが寂しいです。
帰る場所がなくなってから、この地を愛おしく思う気持ちが、どんどん増していることに気づき驚いています。

私にとっては、結婚を機に縁を結んだ地であり、延べ日数にしたら数ヶ月くらいしか滞在していないのに、なぜか愛おしく、ずっと昔から心の中にある風景のように感じるのです。
今になって、もっと義父母と語らい、いろいろなことを教えていただけば良かった、と切なくも思うのです。

民泊からの風景
民泊の庭から見える風景

 さて、今回の法事旅行でどこに泊まろうかという話になりまして、義姉とも相談して、多良木の民泊、一軒丸ごと貸してくれるところを予約しました。
民泊は、初めてです。
自分の中では、インバウンド用という先入観があった民泊ですが、これが大当たりでした。
広々した田畑の真ん中にポツン、ポツンと一軒家があるなか、その民泊はありました。
窓から外を見渡せば、遠くに山々の稜線が美しく、家族・親族だけで過ごせる家は、実家に帰ったようにくつろげました。

民泊のリビングでニャンコ先生のぬいぐるみを発見しました。
可愛い♡可愛い。
最近『夏目友人帳』を知って、はまりかけていると話したら、オーナーが、「人吉球磨アニメ通リズムマップ」を引き出しから出して、私にくださいました。
民泊のオーナー夫妻は温かくて気持ちの良い方たちで、手作りのごちそうもとても美味しくて。
家は、『夏目友人帳』に出てくる藤原家の建物みたいだし、いろいろとイマジネーションが膨らんで、そんな意味でも楽しい滞在となりました。

縁側からの眺め
本家の縁側からの眺め


『夏目友人帳』との出会い

 法事旅が終わってから、暇さえあれば、ネットフリックスで『夏目友人帳』を観ています。
心温まる素敵なお話ですよね。
もっと早く、このアニメの素晴らしさに開眼していれば、帰省のたびに、妖探しに行ったものを、いやいや「聖地巡礼」したものを、とちょっぴり悔しく思いました。
このアニメのタイトルやニャンコ先生のお姿は、だいぶ前に知ってはいたのですが…

人吉駅
2016年 人吉駅

 あれは、2016年の秋でした。
義父が亡くなり、夫は数日前から現地入りしていたので、私は一人で、夫の実家の球磨郡は湯前へ向かいました。
人吉駅まで来て、くま川鉄道に乗り換えようとしたら、電車は行ったばかり。
次の電車まで、小一時間ありました。
まぁ、ここでどうしようと途方に暮れていたら、お腹がすいていることを思い出し、からくり時計が見える喫茶店で何か食べることにしました。

外が見えるカウンター席で、駅の方をぼーっと眺めていると、若い女の子がたくさん歩いているのが見えました。
少人数のグループの観光客の多いこと!
よく見れば、アジア系を中心とした外国人観光客もたくさん歩いているのです。
人吉、変わった⁈ 私が今まで気づいていなかっただけ⁇

気になってご飯をかっ込むと、駅前へ行って探索しました。
みんなの観光の目的は何なのだろう?
結局わからず、観光案内所に入ると、ひねたネコのグッズやマップなどがありました。
案内所の方に伺ってみたら、ここら辺一帯が『夏目友人帳』のアニメに描かれているのだとか。
その時は、「へ~」「ふ~ん」って感じだったのですけどね。

 つい数ヶ月前、故郷恋しさに、このアニメのことを思い出し、見始めたら、もう夢中になりました。
ニャンコ先生、最高です。
斑とのギャップがカッコ良すぎてシビレます。
描かれた風景もとても素敵です。
妖怪たちも、さまざまなタイプがいてワクワクしますね。
『夏目友人帳』の妖怪話には作り話とは思えない、なんだかリアリティを感じるのですよね。
あの地ならあるだろうな、とそんな思いがあるからでしょうか。

特急いさぶろうしんぺい
特急「いさぶろう・しんぺい」車内から


妖との出会い

下町橋
都川と石造りの下町橋


 昔々、子どもが3歳くらいの頃だったか、家族で帰省した時に、多分、私、妖を見ました。
細~い、黒~い男の人。
カッパとか川男とか言うのじゃないでしょうか。

 川遊びに出かけた夫と娘と親せきの子どもたちが帰って来る姿が、道のずっと先に見えました。
夫の隣には、背の高い色黒の細身の男の人がいて、一緒に歩いていました。
同級生かな、と思って見ていたら、向こうが私に気づいたので、会釈をしました。
すると、その男の人は、こちらを見たまま足が止まり、次に、足早に脇道に曲がっていなくなりました。
子どもたちが私に気づいて走ってきました。
夫もそれを追いかけて、走って戻ってきました。
「おかえり~」と私は大きな声で言い、手を振りました。

皆で家に入る時、夫に聞いてみました。
「あの人、同級生?」
すると、夫はポカンとして、
「誰の事?」と。
遠くにいる人を見間違えたのかしら?
いや、そんなことはない、その人は夫に話しかけていたもの。

夜、お義母さんに、昼間の話をしたら、あっさりと
「スズメちゃんが見たんば、そりゃ、カッパたい」と返事が返ってきました。
あの男の人が消えた脇道は、カッパ道と呼ばれていると教えてくれました。

次の日、一人で、男の人が曲がった場所へ行ってみました。
踏み固められて雑草が生えていない細い一筋の道がありました。
カッパ道をどんどん歩いて行き着く先を見てやろう、と意気込んで進んでいきました。
ところが、途中で、なんとなくこの先は行ってはいけない予感がして、引き返しました。

 目に見える世界とは別の世界があるのじゃないか、とずっと思っていました。
なので『夏目友人帳』の世界観に、とても惹かれます。
田沼君や多軌さんのような人は、この世の中に結構いるんじゃないかしら、なんて思っています。
そういう私の母は見えていたようでした。祖母は、それに加えて予知能力もありました。
私は、何度か、音が聞こえたり、影を見たり、気配を感じることはありました。
でも、姿を見ることはなくて。
もし、あの黒い人が妖なら、あの土地の力が見せてくれたのかな、なんて。
夏目君みたいな人も実在するんじゃないの?なんて想像しながら、『夏目友人帳』の世界にどっぷり浸かっています。

湯前とおっぱい

おっぱいストラップ


 お寺での法要が終わり、皆で湯前駅前の観光案内所&物産館に寄りました。
下村婦人会さんの梅干しや市房漬け、多良木のドレッシング、錦町のお茶などなど、たくさん買い込んで、店を出る時、娘がこそっと小さな袋を「プレゼント」と言って、私に手渡してくれました。
中に、縮緬でできたおっぱいのストラップが入っていました。

潮神社(うしおじんじゃ)は、おっぱいの神様。
子宝と安産祈願がメインのようですが、乳の病気にもご利益があるのですね。
11月28日に、くま川鉄道が一部復旧しました。
湯前駅のホームには、「潮の鐘」というおっぱいの鐘もあるそうです。
次回、伺った時には、この鐘を高らかに鳴らして、潮神社へもお詣りしたいです。

ニャンコ先生のぬいぐるみ


 最近、ニャンコ先生の小さなぬいぐるみを手に入れました。
今度、旅する時には、このニャンコ先生を連れて、妖探しをしたいと思います。

 この投稿が今年最後の記事となります。
ブログを始めてから約6ヶ月になりました。
拙いブログに、お立ち寄りいただき、お読みいただいた皆さま、ありがとうございました。
これからも身近な出来事を綴っていきますので、来年も、お越しいただけましたら幸いです。
皆さま、どうぞ良い年をお迎えください。
2021.12.29








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