術後1年 検査結果 2021.12.14 ー持病は乳癌⑧ー

 

診察室で

 「結果から言うと良性」
診察室に入って聞いた、主治医の第一声でした。
私は「癌」「再発」の言葉を聞くと覚悟して身構えていたので、予想外の結果に呆然としました。
うれしいとか、良かったとか、そんな思いには至らず、私は、ただ「わーっ、そうでしたか」と言い、下を向いてしまいました。

皆さんは、感情を伴わない涙が出たご経験はありますか?
私は、以前に一度だけありますが、その時と同じ涙が湧き上がってきました。
私は主治医の前では、感情的にならないよう努力しています。
それは、主治医に先入観を与えたくないからです。
主治医には、こちらに気を遣うことなく、何でもストレートに話してもらいたいからです。
なので、この涙、困りました。
他のことを考えて、何とか止まりました。

 細胞診は、狙った細胞が採れなくて正しい判定が出ないことがある、とネットで読みました。
主治医からも「細胞が採れなかったこともある。針を刺した位置がずれたりとかもあるから」と話がありました。
「ただ、今回、良性と出ているから」ということで、様子を見ることになりました。
薬は変えずに、アナストロゾールを続けることになりました。

 次に血液検査の結果の用紙を渡されました。
3種類の腫瘍マーカーは基準値内でした。
「再発の発見は、腫瘍マーカーだけじゃないからね」と主治医は言いました。

そのあと、CTの画像を見ながら、主治医の説明がありました。
「これを見ると、反対側のリンパも腫れているところがあるね」と言われました。
転移しやすいと言われる骨・肺・肝臓だけではなく。映っている部位をひとつひとつ示して「大丈夫だね」と言ってくれました。

CT画像を素人の私が見たところで、白いポチポチや、うっすらグレーっぽいところや、真っ黒のところがあるだけで、てんでわかりません。
肺のところに、白く光る丸がいくつか映っているのが気になって、思い切って聞いてみました。
「これ? 血管」とサラっと返ってきました。
ほうほう、血管は白く映るのですね。

外科待合室で

 診察が終わって、待合室の椅子に座りました。
座った途端に、また、勝手に涙が…
何なのでしょう、これ。

 今朝は、診察開始の9時より前に受付を済ませたし、待合室にいる人も少なかったので、早く呼ばれるだろうと思っていました。
ところが、主治医の診察室には、次から次へと別の人が呼ばれて入って行きました。
なかには、私より後に来た人も呼ばれて…
私より早く来て診察券を入れて離席した人かもしれないのに、悪い予感で頭の中がいっぱいの私は「後回しにされてる」と思ったり。
見慣れない医師が出入りしている様子を見て、「何かあるんじゃないか」と思ったり。
待っている4、50分が長く感じ、不安と緊張感で張りつめていました。
そんなこともあり、「良性」の一言で脱力して涙腺まで緩んでしまったのかもしれません。
体と脳の動きって、時々、勝手で不思議です。

 看護師さんが会計に出すファイルを渡しに来てくれました。
私の感情ぶれぶれの様子に気が付いて「大変でしたよね。待ってる時間、不安でしたよね。1年前もいろいろありましたものね。大丈夫?」と優しく声をかけて、背中をさすってくださいました。
この方は、1年前の入院の時のことを覚えていてくださったのだと有難く思いました。
今回の細胞診のときも主治医と一緒に処置してくださった方で、何かとお世話になっている看護師さんです。
初診のときも、今日も…
私は、この看護師さんを、患者の気持ちがよくわかる、そして寄り添ってくれるスーパー看護師さんだと思っています。
動揺していたのか、ホッとしたのか、外科に傘を忘れて会計に向かう私を、この看護師さんは追いかけて来て、傘を手渡してくれました。

 この先だって、何があるかわかりません。
病気に対し、まじめに取り組んでいても、当然、期待しない結果が出ることもある。
それを忘れないようにしたいです。
次回は、平常心で気持ち明るく診察に臨みたいと思います。

○この日の流れ
主治医による結果説明のみ

○お会計(保険診療 3割負担)
病院 ¥1,050
処方箋薬局 ¥5,840(アナストロゾール90日分)

家に帰ってから

 家に帰って時間が経つにつれ、だんだん「良性」と言われた実感が湧いてきました。
この日の朝までは、再手術になるだろうなという心づもりでいたので、年内なら来週入院だろうか、家族に何と言おうか、予定の調整はつくだろうか、弟の施設には黙っていようか…等々、先回りして考えていたあれこれを、頭の中から追い出すのに時間がかかりました。

とりあえず、入院・手術を回避することができて良かった。
家族に心配させずに「1年検診、大丈夫だったよ」と報告できて良かった。
弟の人生の伴走をまだまだ続けていかなくちゃならないから、不安要因を打ち消せて良かった。
そんなことを思いながら、ようやく安堵できました。


 サバイバーの皆さん、ひとりひとりの治療の道は違っても、診察の度に一喜一憂したり、日々の暮らしの中で急に不安な気持ちに襲われることは、共通の思いなのではないでしょうか。
心穏やかに過ごせる日々が、長く続くように祈りを込めて。
今日も、お読みいただき、ありがとうございました。

2021.12.17


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