入院 ー乳癌になりまして⑧ー

  
 入院前日の9日は、17年続けたパート仕事の最終日でした。
なんでしょう…仕事中、いろいろな思いが駆け巡りました。
また、辞めると決めてからこの日まで、日数が短かったので、机や私物の片付け、手続きなどで目まぐるしかったです。
明日からの入院、手術を前に、退職の感傷に浸る間もなく、家に帰ったら、いただいた花束を花瓶に生けました。そして、いつものように大急ぎで夕食を作りました。
メールやラインやカードで、メッセージをいただくも、病気のことはオープンにせずに退職したため、何となく後ろめたい気持ちがあり、苦しかったです。

12月10日 入院手続き中に事件は起こった!!

 入院する日がやってきました。9時までに受付をするようにとのこと。
朝早いので、一人で行くつもりでしたが、夫が一緒に行くと早く起きてくれました。
娘は、疲れて寝ていたので、「行ってくるね」と声だけかけて家を出ました。

 病院に着いて、入院受付で手続きを始めたら、携帯が鳴りました。
「○○病院です。弟様が廊下で転んだのか、足をひどく痛がってまして、骨折しているかもしれないです。今から、△△病院へ向かいますが、これから、こちらへ来ることはできますか?」と。病棟看護師の声は、切羽詰まった語気でした。
いやー何ですか⁇このタイミング…

 実は、私の両親はすでに他界し、重い精神病を患う弟は、隣県で入退院を繰り返しながら、一人暮らしをしています。
このところ、長期入院中で安定した状態でした。
また、コロナで面会ができないこともあり、弟の病院関係者に、私の病気のことは、知らせていませんでした。
一週間余りの入院です。
黙っていても大丈夫、わかりっこないと考えていました。
ところが…です。人生、上手くいかないものですね。

結局、全て正直に話しました。そして、どうするかを折り返し電話すると伝えました。
電話を切ると娘からのラインに気がつきました。
先に家の電話に、弟の病院から電話が入っていたようです。

 夫に「悪いけど、これから弟のところへ行ってもらえない?」と頼むと、「俺は、そのために休みを取ったわけじゃない!」と不機嫌になってしまいました。
全てをキャンセルして行くしかないか…。骨折じゃ仕方ないよな、と泣きたくなるような気持でした。
そうこうしていると、娘から電話がきました。
「病院へは、私を窓口にしてもらうようにするから。●●君(娘は弟をオジサンと呼ばずに名前に君づけです)のことはお任せください。お父さんより私のほうが適任だと思うよ」と。
聞けば、持っていく物の準備をすでに始めている様子でした。
涙が出るほど、有難かったです。

夫に、娘が行ってくれることを伝えたら、夫も一緒に行ってくれることになりました。
夫には、お金のこと、どこから用意するかなど説明しました。
そして、一旦、家に戻ってもらって娘と合流して隣県へ向かってもらいました。
このあと、3者間で嵐のように連絡を取り合いました。
そして、弟は、元居た病院から、整形外科のある総合病院へ無事、入院することができました。
弟は、大腿骨を骨折していました。私と同じ、明日の午後から手術をすることが決まりました。

 そんなこんなで、私の入院受付のほうは、中座、中座で大変迷惑をかけ、私は預け金を渡したかどうかの記憶も吹っ飛び、よくわからないうちに何とか入院手続きは終わりました。このあと、外科外来の受付へ移動しました。

外来診察

 いつもの外科外来で、身長・体重・血圧・体温を計測しました。
なんと! 血圧が、ついぞ見たことのない、上145!! 
110超も、めったにない私の血圧、朝の事件のせいなのか、入院・手術を前にビビっているのか、わかりませんがビックリの数値が出ました。
この血圧の高い状況は、手術日まで続きました。
その後は、いつもの血圧に戻りました。不思議でした。
外来診察を終えると、病棟看護師さんが迎えに来ていました。
一緒に病棟へ移動しました。

病室

 20数年前の出産以来の入院になります。
病室を個室にするか、大部屋にするか、事前に聞かれていました。
私は、今回は、大部屋一択でした。
なぜなら、コロナで見舞客が来ることもなく、生活音がしない場所で一人は寂しいですし、時間の感覚が鈍りそうでしたから。
それと自分は、どこでも寝られる質なので、大部屋でも大丈夫だと思いました。
保険のお金が少し入りそうでしたが、それは、今後の治療や疑似乳房の購入も考えているので、そのためにとっておこうと思いました。

 部屋に案内されました。6人部屋の一番奥、窓側でした。
建物は古いのですが、ベッドの周りのスペースは広く、清潔でした。
欲を言えば、個別の冷蔵庫が欲しかったです。

タオルと病衣のレンタル申込書を看護師さんに提出しました。
すぐ、3枚ずつ持ってきてくれました。
使い切ったら、新しいものを補充してくれるとのことでした。

荷解きをし、病衣に着替えたら、なんだか楽しい気持ちになってきました。
途中、お風呂に入るように声がかかり、入浴しました。
持ってきた飲み物は、共同冷蔵庫(1人2本ずつ、部屋番号名前を書く)へ入れました。

 お気に入りの空間が出来上がって、のんびりくつろいでいると、主治医がやってきました。
弟が骨折し、明日の午後手術になったこと、家族が向こうへ行っていて、もしかしたら、私の手術の付き添いができないかもしれないことを報告し、いなくても手術を受けることはできますか?と聞いてみました。
主治医は心配してくれて「明日の手術、止める? 好き添いはいなくても、身内がいない人だって、手術はするから、それは大丈夫だけど…」と、言ってくれました。
私は、予定通りやってほしいとお願いしました。

 「じゃ、ちょっとエコー室、行ける?」と、主治医から声がかかり、一緒に移動しました。
エコー検査と触診がありました。
腋のあたりを念入りに調べていました。
センチネルリンパ生検をやりたくないと言って、おまかせでリンパ節を取ってください、と主治医に丸投げした私です。
私のせいで、悩ませてしまっているように思いました。
先生…いろいろすみません…

 診察が終わった後、病室に戻りました。
その日は、時折、看護師さんが来て、体温と血圧測定がありました。
ご飯を美味しくいただいて、21時前には寝落ちしました。

 これをお読みいただいた皆さまの中には、手術を間近に控えた方もいらっしゃるかもしれませんね。
全身麻酔下の手術は、ほんとうに記憶がないままに終わるので、怖いことは、ないと思います。
安心して前日は、よく眠ってください。
無事に手術が終わりますこと祈っております。
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

2021.7.30

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